コラム メンテナンス ボリューム ヴィンテージオーディオ

オーディオの症状別ガイド
第1回:ガリ

ボリュームを回すと出るガリガリ音の原因と対策

Crafted Audio Services | 2026年6月
ボリュームのガリ — ヴィンテージアンプ

ヴィンテージアンプや古いオーディオ機器を使っていると、ボリュームを回した時に「ガリガリ」「バサバサ」といったノイズが出ることがあります。この症状は、一般的に「ガリ」と呼ばれています。

ボリュームのガリは、主にアナログボリューム部品を持つ製品で起こる経年劣化症状のひとつです。アンプの音量ボリュームだけでなく、CDプレーヤーやカセットデッキなどの再生機器側にあるLINE OUT出力調整、REC VOL調整、バランス調整などでも発生することがあります。

オーディオ機器において、ボリュームは単なる操作部品ではありません。音声信号が通過する重要な部品であり、最適な音量で再生・録音するために、回路上で重要な役割を担っています。そのため、良い状態で音楽を聴く、録るためには、ボリューム部品の劣化や接触不良はできる限り解消しておきたい部分です。

「オーディオの症状別ガイド」では、オーディオ機器に起こりやすい不具合を症状ごとに取り上げ、その原因や注意点、修理・メンテナンスで大切になる考え方を解説していきます。第1回は、ヴィンテージアンプでもご相談の多い「ガリ」についてです。


ガリとはどのような症状か

ガリは、主に音量調整をしている時に発生します。代表的な症状としては、ボリュームを回すと「ガリガリ」と音がする、音量調整時に「バサバサ」「バリバリ」とノイズが出る、片側の音が一瞬途切れる、特定の位置で音が不安定になる、小音量時に左右の音量差が気になる——といったものがあります。

意外に思われるかもしれませんが、無音状態でボリュームを回しても、ガリが分かりにくい場合があります。修理作業など専門的な確認では、音楽ソースではなく基準信号などを入力し、ボリュームを動かした際のノイズや信号の乱れを確認することがあります。音楽再生中には気づきにくい接触不良も、こうした確認によって把握できる場合があります。

ガリは、アンプのメインボリュームだけに発生するものではありません。バランス調整、入力切替、REC VOL、LINE OUTの出力調整など、アナログ接点を持つ部分であれば同様の症状が出る可能性があります。


ボリュームのガリが発生する主な原因

ボリュームのガリは、内部の接点不良によって発生することが多くあります。ボリューム内部には、音声信号を可変させるための接点があります。よく知られているのは、抵抗体の上を動く摺動子、いわゆる回転ブラシ部分の接点不良です。

しかし、ガリの原因はそれだけではありません。ボリューム内部には、入力側の信号を摺動子へ伝えるための金属接点もあります。つまり、主に以下のような接点部分が関係しています。

・抵抗体の上を動く摺動子の接点
・入力信号を摺動子へ伝える金属接点
・回転軸周辺の接触部

長年の使用により、これらの接点部分には摩耗粉、汚れ、酸化、硫化、古くなったグリスなどが堆積していきます。特に、ボリュームを回転させることで発生するカーボン抵抗体や金属面の摩耗粉が接点に入り込むと、導通を妨げる原因になります。その結果、ボリュームを回した時に接触が断続的になり、「ガリガリ」というノイズとして聞こえるようになります。

また、回転軸周辺のグリスが経年で変質し、汚れや摩耗粉と混ざることで、簡単には落としにくい状態になっているケースもあります。しばらく使用していなかった機器では、接点表面の酸化やグリスの劣化によって、久しぶりに動かした時にガリが出ることもあります。


ボリュームを何度も回すと直る?

ガリが出た時に、ボリュームを何度も回して馴染ませるという対処を見かけることがあります。確かに、一時的にノイズが軽くなる場合はあります。これは、接点上にあった汚れや摩耗粉が一時的に移動し、接触状態が変わるためです。

ただし、これは根本的な改善ではありません。むしろ、必要以上に何度も回すことで、カーボン抵抗体や金属接点をさらに摩耗させてしまう可能性があります。結果として、新たな摩耗粉が発生し、ガリの原因となる汚れを増やしてしまうこともあります。

「回したら少し良くなった」という状態でも、内部の汚れや接点不良が解消されたわけではありません。症状が繰り返し出る場合は、応急的な対処ではなく、ボリューム内部の状態を確認することが大切です。


接点復活剤の使用には注意が必要です

ガリが出た時に、市販の接点復活剤を吹き付ける対処を見かけることがあります。しかし、当サービスではヴィンテージアンプや古いオーディオ機器に対して、安易な接点復活剤の使用は基本的に推奨していません。

本来、ボリューム内部の汚れや摩耗粉を取り除くためには、異物を十分に洗い流し、接点部分を適切な状態に戻す必要があります。しかし、ボリュームを機器に取り付けたままの状態で、それを確実に行うことは簡単ではありません。

接点復活剤を吹き込むことで、一時的にノイズが減ったように感じる場合があります。しかし、実際には内部に残った汚れや古いグリス、摩耗粉が薬剤と混ざり、かえって固着してしまうことがあります。その結果、より大きな汚れの塊となり、再び接触不良を起こす原因になる場合もあります。

また、接点復活剤にはさまざまな成分が含まれているため、基板や周辺部品に付着した場合、別の不具合につながる可能性もあります。特にヴィンテージ機器では、オリジナル部品の入手が難しいことも多いため、安易な処置で状態を悪化させてしまうと、修理の選択肢が限られてしまうことがあります。大切な機器ほど、症状の原因を確認したうえで、慎重に対応することが重要です。


適切なガリ対処策

一般的に、ガリが発生したボリュームは交換するのが分かりやすい対処方法です。新品のボリュームに交換できれば、部品としての性能は回復しやすくなります。しかし、ヴィンテージオーディオの場合は簡単ではありません。

古い機器では、当時と同じオリジナル部品がすでに入手困難になっていることが多くあります。特に海外製のボリュームや専用品の場合、同等部品の確保が難しいケースも少なくありません。また、サイズや抵抗値が近い部品が見つかったとしても、単純に交換すればよいとは限りません。

ボリュームは、音量を調整するだけの部品ではなく、音量変化の仕方、左右差、回転トルク、操作感、音の印象にも関わる重要な部品です。当時のオーディオメーカーは、機種ごとの設計思想や音づくりに合わせて、ボリューム部品を選定していました。

そのため、当サービスでは可能な限り、当時そのボリュームが採用された意図や狙いを尊重します。交換ありきではなく、オリジナル部品の状態を確認し、分解洗浄や調整によって改善できるかを見極めます。

ボリュームの構造上可能な場合は分解し、内部にたまった汚れ、摩耗粉、古いグリス、接点の酸化や硫化を確認します。特に回転軸近くの金属接点では、回転軸グリスが浸透し、汚れや摩耗粉と混ざって簡単には落とせない状態になっているケースもあります。摺動子や金属接点については、状態に応じて特殊溶剤や超音波洗浄などを用い、導通を妨げる異物や酸化・硫化の除去を行います。

洗浄後は、単に組み戻して終わりではありません。ボリューム単体での動作確認や左右差の確認を行い、必要に応じて調整します。また、ヴィンテージ機器では、ボリュームを回した時の重さや滑らかさも大切な要素です。価値ある機器ほど、音が出ることだけでなく、操作した時の質感まで含めて整えることが重要だと考えています。

最終的な仕上げでは、回転軸部に適切なトルクグリスを塗布し、回した時の感触も確認しながら仕上げていきます。当サービスでは、ガリを抑えることだけを目的とするのではなく、その機器らしい操作感や使い心地をできる限り損なわない対処を目指しています。

ボリュームの分解洗浄作業

こんな症状がある場合はご相談ください

以下のような症状がある場合は、ボリュームや接点部分に不具合が発生している可能性があります。

・アンプのボリュームを回すとガリガリ音が出る
・音量調整時にバサバサ、バリバリとノイズが入る
・片側の音が一瞬途切れる
・小音量時に左右差がある
・特定のボリューム位置で音が不安定になる
・バランスつまみや入力切替を動かすとノイズが出る
・REC VOLやLINE OUT調整時にノイズが出る
・接点復活剤を使っても症状が再発する
・古いアンプを久しぶりに使ったらガリが出た

ボリュームのガリは、初期段階であれば分解洗浄や調整で改善できる場合があります。一方で、抵抗体の摩耗や部品破損が進んでいる場合は、交換や代替部品の検討が必要になることもあります。大切なヴィンテージオーディオを長く安心して使うためにも、自己判断で処置を重ねる前に、専門的な点検をおすすめします。

点検・修理のご相談

Crafted Audio Servicesでは、ヴィンテージアンプをはじめとしたオーディオ機器の点検・修理・メンテナンスを承っております。ボリュームを回した時のガリガリ音や、音量調整時のノイズでお困りの際は、お気軽にご相談ください。ご相談はこちら