オーディオの症状別ガイド
第4回:電源が入らない
年代によって異なる原因と、ヒューズ交換に潜む危険性
「電源が入らない」——オーディオ機器で全般的に共通しそうな症状です。ただし、年代や機器の種類によって、起こっている要因の切り分けが違うことがあります。
今回は、機器の電源方式の違いを踏まえながら、電源が入らない場合に考えられる原因と、注意していただきたい点について解説します。
年代によって異なる電源方式
古いオーディオ機器は、レバースイッチやプッシュスイッチなどの機械式スイッチで、メイン電源(AC100Vが導通)をON/OFFします。当然、マイコンなど制御を司るブロックは存在せず、機械式スイッチによって電源操作、各種音質操作や機能操作を行います。
一方で、リモコンが付き始めた年代からは、メイン電源はスタンバイ電源方式となりました。ACコードをコンセントに挿すだけでスタンバイ状態(よくあるのはインジケーターだけ点灯)になり、電源スイッチやリモコンで電源ONとするものが、現在では主流となっています。これは機器内部のマイコンによって、電源操作、各種音質操作や機能操作を行う方式です。
古い製品において電源が入らないケース
起こっている現象としてよくあるのが、ヒューズ切れです。ヒューズを交換して直った、というケースもよく聞きます。しかし、そこには本来の原因が隠れているリスクがあります。
大切なのは、「なぜヒューズが切れたのか」という点です。
ヒューズの切れ方にも、いろいろあります。スパーク状でヒューズが断線した場合、ヒューズ内が赤熱しジワジワと切れた場合などです。
アンプでよくあるのは、ファイナルトランジスタがショートし、異常な大電流が流れてしまう場合です。このときヒューズはスパークし、速断してしまいます。ヒューズを何回交換しても、同じように切れます。この場合、ファイナルトランジスタだけの異常もあれば、そこが異常を起こして周辺のパワーアンプブロックまで故障させている場合など、状況はさまざまです。いずれにしても、きちんとした修理・メンテナンスが必要です。
ファイナルトランジスタ以外では、昔よく使われたヒューズ抵抗の抵抗値上昇や半田割れ、小電流を扱う回路のいずれかの部品の不具合などによって回路バランスが悪くなり、回路内での電流負荷が増すことがあります。すると、徐々にヒューズを通る電流が増え、いずれヒューズを切断してしまいます。この場合も、きちんとした修理・メンテナンスが必要です。
ヒューズは、交換して直すものではありません。あくまで、コンセント側のブレーカーやその他機器への悪影響防止、そして大事なオーディオ機器のそれ以上の故障や発熱、発火などを防ぐ、大事な安全部品です。容易な判断で使い続けるのは大変危険です。
マイコン制御の製品において電源が入らないケース
次に、現代の機器にあるマイコン制御の機器についてです。まずは、スタンバイ状態のインジケーターが点灯しているかどうかを確認します。
インジケーターが点灯せず、スタンバイ状態にもならない場合は、マイコン周りの制御回路の不具合も考えられます。マイコンは、動作電源(+5Vなど)のほかに、基準発振信号となる水晶発振子からの振幅信号、機器をONさせる時のリセット入力など、基本条件が揃っていないと電源をONにできません。このような場合は、制御回路周りの解析、修理が必要です。
その他の原因
ヒューズ断線やマイコン周りの不具合のほか、電源トランスの温度ヒューズ断線の場合もあります。
また、機器の電源を入れる系統や回路は、アンプやCDプレーヤーなど、機器の種類によってさまざまです。電源不具合は最悪の場合、発熱、発煙、発火などの大きなリスクも秘めているため、専門の技術者によるきちんとした処置が必要になります。
適切な対処策
電源が入らない症状で最も注意していただきたいのは、ヒューズを交換して様子を見る、という対処です。ヒューズが切れたという事実は、その手前で異常な電流が流れたという結果です。原因を確認しないままヒューズだけを交換すると、同じ故障を繰り返すだけでなく、機器内部の損傷範囲を広げてしまう可能性があります。
また、規定より容量の大きいヒューズを使用することは絶対に避けてください。ヒューズが安全部品として機能しなくなり、発熱や発火といった重大なリスクにつながります。
当サービスでは、電源が入らない機器について、まず機器の電源方式と症状の状態を確認します。機械式スイッチの機器であれば、ヒューズの切れ方から異常電流の性質を推定し、ファイナルトランジスタ、ヒューズ抵抗、電源回路周辺の部品状態を確認していきます。マイコン制御の機器であれば、スタンバイ状態の有無を起点に、動作電源、発振回路、リセット回路など、マイコンが起動するための基本条件を順に確認します。
電源部の不具合は、単に「電源が入るようになればよい」というものではありません。原因となった箇所を特定し、周辺への影響も含めて確認したうえで処置することが、機器を安全に長く使い続けるために欠かせません。
こんな症状がある場合はご相談ください
以下のような症状がある場合は、電源回路や保護回路、制御回路などに不具合が発生している可能性があります。
・電源スイッチを入れても、まったく反応がない
・ヒューズが切れている
・ヒューズを交換しても、すぐにまた切れてしまう
・電源を入れた瞬間に、ヒューズが飛ぶ
・ACコードを挿してもスタンバイのインジケーターが点灯しない
・スタンバイ状態にはなるが、電源がONにならない
・リモコンでも本体スイッチでも電源が入らない
・電源投入時に、焦げたようなにおいや異音がする
・古いアンプをしばらくぶりに使おうとしたら電源が入らない
電源に関する不具合は、発熱、発煙、発火などの大きなリスクを伴う場合があります。ヒューズの交換や通電の繰り返しといった自己判断での対処は、症状を悪化させたり、危険な状態を招いたりすることがあります。大切なヴィンテージオーディオを安心して使い続けるためにも、電源が入らない場合は、通電を続けずに専門的な点検をおすすめします。
Crafted Audio Servicesでは、ヴィンテージアンプをはじめとしたオーディオ機器の点検・修理・メンテナンスを承っております。電源が入らない、ヒューズが繰り返し切れる、スタンバイのインジケーターが点灯しないといった症状でお困りの際は、お気軽にご相談ください。ご相談はこちら