【お客様インタビュー】KENWOOD L-02A ~想い出の機器を再び~
「18歳の時に出会ったL-02Aの衝撃が忘れられず、この歳になってもL-02Aを生き生きと鳴らしたい——そんな想いからメンテナンスをお願いしました。」
過去、合計4台の所有するL-02Aのメンテナンスをご依頼いただいた宮崎県在住のK様。
メンテナンスを終えお手元に戻った4台は、各種動作も安定し見事な鳴りっぷりをしているとK様からご報告をいただきました。
『4号機までいずれも最高の完成度に至ったと感じています。音の輪郭を示しつつも、奥行きや高さ方向に立体的に切れ込んでいく表現力を示してくれています。圧巻のパフォーマンスです。』
このL-02Aへのご依頼の背景や想いについて、実際にK様のご自宅を訪問させていただきました。
【L-02Aとの出会いは?】
小さい頃、父親がよくレコードを聴いていまして、中学生の時にステレオセットを買ってもらったのがオーディオ好きになったきっかけです。当時のセットはNECでしたね。その後A-10が出たのを覚えています。
その後、トリオのスピーカーLS-202をデンオンのアンプで鳴らしていた時にトリオの音作りが良いと思い、そこから益々トリオに興味が沸きました。当時はDCアンプがポピュラーになり始めた頃で、KA-9300が欲しかったのですが高くて買えなかったのを覚えています。以降はサンスイなどを使っていました。
18歳のある日、デパートのオーディオコーナーにL-02AとLS-1000が展示されていて、その時聴いた音が強烈で、それがL-02Aとの最初の出会いです。
LS-1000の低域の引き締まった骨格のある音、それをL-02AのΣドライブで駆動するわけですから悪いはずがないですよね。当時55万円ですから18歳じゃ無理で、これにL-02TとL-07Dを加えると100万円を超える……夢また夢の装置でした。
【今回メンテナンスを依頼しようと思ったきっかけは?】
しばらくは手持ちのステレオやあらゆる機器、そしてヤマハのCX-10000/MX-10000/NSX-10000などを使ってきましたが、やっぱり昔聴いたL-02Aの音が忘れられず、ヤマハを全部売ってL-02Aの環境づくりに集中することにしました。
『状態の良いL-02Aを所有し、発売当時のL-02Aをも上回る性能をもっと引き出してみたい』と。
そんな中、90年代中盤に念願のL-02A(1号機)を手に入れることができました。所有できたのは良かったのですが、すでに発売から10年以上が経過し、色々なところにガタが出始めていました。操作トレーが出てこないというのがよくある症状で、他の箇所もいつ悪化してもおかしくない。ならば1号機以上の状態が良いものはないかと、記念すべき1号機だけは残し、2台目3台目とL-02Aを買い足しては売って……という騙し騙しの状態でした。いま思えば、どの個体もそれなりの年数が経過し、結局どこか悪いところがありましたね。
なので、単なる修理だけではなくオーバーホールやフルメンテナンスをしてくださる所を探していたのですが、なかなか見つかりません。ネットを探せば修理業者など色々出てきますが、いろんなアンプを手掛けていてバックオーダーを抱えすぐに頼める状態ではなかったり、そもそもL-02Aをどこまで分かっているか疑問だったりで、なかなか頼めないでいました。「頼みたいが、頼めない」状態が数年続きました。その間は、電源を入れても長時間聴くと壊れるんじゃないかという不安から短時間聴いて終わり……というように、満足する楽しみ方はできなかったですね。
そんな中、元ケンウッドでサービスを担当し、当時の製品企画や技術陣とも交流があるクラフテッドオーディオサービスの松尾さんを知り、「ここなら!」と思い依頼しました。
【メンテナンスをやってみていかがでしたか?】
まず、アンプとしての普通の所作が普通にできる、その喜びがあります。
安心して電源を入れ、安心して長時間使用でき、安心してストレートDCだって使える。「いつ壊れるか分からない」という不安はありません。特にDCの怖さは……。いま私自身、OTLアンプのカウンターポイントSA-4をメンテしていますが、大事なスピーカーを繋げて飛んだら、ということを考えると本当に恐ろしい。だから安心して使えることが、本当にありがたいのです。
またメンテ内容もすべてオープンにしていただき、詳細なレポートもありました。基板や半田、一つ一つの作業や箇所に魂が入っていると感じました。レポートにわざわざ記載しない細かいところが多くあるのも、L-02Aの音を聴けばよく分かります。計測結果では歪率が0.0015%でしたが、パワー部だけだと0.001%を切っていると思います。これが43年前のアンプなわけですから、並大抵のアンプではないと思います。それをクラフテッドオーディオサービスの手で極限までやっていただいた、そう思っています。性能だけでなく、外観も新品に近い美しさに仕上がってきて、それも感動しました。
また私からの各種カスタマイズ依頼にも、あそこまで手を入れてもらえるとは思っていませんでした。丁寧に応えていただき、1~4号機への愛着も非常に高まっています。
いまこうしてL-02Aがきちんと音を出すという当たり前のレベルではなく、当時以上の鮮度・性能で音を出せるようになりました。この43年前のマテリアルでこの状態まで仕上がるのですから、リレーの防磁や増幅回路のドレン抵抗変更など今日的な手法で挑戦すれば、本来のポテンシャルはもっと引き出せるのではという新たな欲も出てきています。
【いまL-02Aを所有されている方へのメッセージはありますか?】
アンプという機器の本質を極めたものがL-02Aだと思います。今の製品は経済合理性が優先され過ぎているので、今後このような機器が出てくることはないと思っています。L-02Aは40年以上も前に現に出現していたわけですが、時代が古いからこそ見落とされがちなだけで、そこには現代の技術でも叶わないものがたくさん詰まっているのだと思います。当時のトリオ社内でも、開発者以外の技術者は分かっていなかった可能性があるのではと。開発者の方々は、言いたくても言えない部分もたくさんあったのだろうと思います。だからL-02Aは奇跡に近い機器だと私は思います。
この機器が今もなお苦労すれば手に入る、あるいはすでに手元に置いている方には、もう一度トリオ社が取り組んだ開発の真の成果を、ご自身で味わっていただきたいと思います。Σドライブなんて他社ではやりませんし、世界中のどこにもない。L-02Aはアンプの中のアンプなのだと。だから単なるセパレートアンプ、あるいはプリメインアンプという見方でいるのではなく、L-02Aが作られた時に開発者が何を目指していたのか、ということをもう一度見つめ直してもらえると、本当の価値が見えてくると考えています。
オーディオ評論家の菅野沖彦先生は「このL-02Aこそは最もコニサーズアイテムに相応しい製品である」と仰せでしたが、私は「L-02Aは80年代に製造された、日本工業製品の精華の一つであり、オーディオファイルの真のコニサーズアイテムである」と確信しております。(※コニサーとは、美術品など品位の高いアイテムに対し、鑑定や目利きを指す言葉です。)
ただ残念なことに、それが頭で分かっていても、現実化するにはそれが分かった技術者がいないと困るわけです。その現実化を今回叶えてくれたのが、クラフテッドオーディオサービスさんだということを知っていただきたいです。今回それを私自身が確認しました。