くたびれたスタジオモニターの本領を取り戻す

基本情報
| メーカー | JBL |
|---|---|
| モデル | 4311BWX |
| カテゴリ | スピーカーシステム |
| 発売年 | 1980年頃 |
| 作業内容 | フルレストア(ウーファー修復・アッテネーター分解清掃・エンクロージャー再仕上げ) |
概要
JBL 4311BWXは、世界中のスタジオや放送局で採用された4311シリーズの3代目にあたるスピーカーシステムです。低域に30cmコーン型ウーファー2213H、中域に13cmコーン型スコーカーLE5-10、高域に3.6cmコーン型トゥイーターLE25-2を搭載した3ウェイ構成で、ウーファーはネットワークを介さずフルレンジで動作するJBLらしい設計が特徴です。
フロントバッフルは、小スタジオや調整室での吊下げ使用を想定し、スコーカーとトゥイーターを下部に配置したユニットレイアウトを採用。中域・高域それぞれに独立したレベルコントロールを備え、フロントグリルを装着したままでも調整できる実用的なデザインとなっています。
今回の個体は、ウーファーの歪み、スコーカーのセンターキャップ潰れ、アッテネーターの経年劣化など複数の症状が見られたため、各ユニットの修復からエンクロージャーの再仕上げまで、総合的なレストア作業を実施しました。
診断
入荷後の動作確認において、ウーファーからの音声に歪みが確認されました。ダンパーおよびエッジの経年劣化が原因と判断しています。
スコーカーについては、センターキャップの潰れを確認。音声出力への影響に加え、外観上の問題もあるため交換対応としました。
アッテネーター(HF/MF)は、操作時のガリノイズや接触不良の兆候が見られたため、分解のうえ接点の状態を確認する方針としました。
エンクロージャーは全体的に経年による塗装のくすみや小傷が見られ、再仕上げが必要な状態でした。
作業内容
ウーファー(2213H)
ダンパー交換およびクロスエッジへの張替えを実施しました。あわせて、JBLの特徴であるホワイトコーンの着色も行い、外観・性能ともにリフレッシュしています。
スコーカー(LE5-10)
潰れていたセンターキャップを新品に交換しました。
アッテネーター(HF/MF)
HF・MFそれぞれのアッテネーターを取り外し、完全分解のうえ接点部を目視確認しながら磨き直しを実施。酸化・硫化防止の処置を施したうえで再組み上げしています。
エンクロージャー
古い塗装面を一層研磨で除去し、ウォールナットオイルで仕上げました。木目を活かした自然な風合いに再生しています。
その他
SP端子をバナナプラグ対応のものに交換し、使い勝手を向上させています。
写真






交換部品
| 部品名 | 対象ユニット | 備考 |
|---|---|---|
| ダンパー | ウーファー(2213H) | 交換 |
| クロスエッジ | ウーファー(2213H) | 張替え |
| コーン紙着色 | ウーファー(2213H) | ホワイトコーン再着色 |
| センターキャップ | スコーカー(LE5-10) | 新品交換 |
| SP端子 | 本体 | バナナプラグ対応品に交換 |
作業結果
スウィープ音源を使用した音質確認を実施し、歪みやノイズがないことを確認しました。HF/MFアッテネーターの動作確認も行い、ガリノイズなく全域でスムーズに動作しています。
ウーファーのダンパー・エッジ交換により低域の再生能力が回復し、ホワイトコーンの再着色とエンクロージャーのオイル仕上げにより、外観も含めてトータルにリフレッシュされた状態に仕上がっています。
技術者コメント
4311シリーズはJBLのモニタースピーカーの代名詞的な存在で、中でもBWXはウォールナット仕上げの落ち着いた佇まいが魅力のモデルです。ウーファーがネットワークを介さずフルレンジで動作する設計は、JBLらしいダイレクト感のあるサウンドにつながっています。
今回はウーファーのダンパーとエッジ、スコーカーのセンターキャップと、振動系パーツを中心に手を入れています。特にウーファーの修復はこのスピーカーの心臓部にあたる作業なので、コーンの着色も含めて丁寧に仕上げました。アッテネーターも完全分解して接点を磨き直しているので、レベル調整も本来のスムーズな操作感に戻っています。
エンクロージャーは古い塗装を落としてウォールナットオイルで仕上げ直しているので、木目が綺麗に出ています。見た目も音も、しっかりリフレッシュできた一台だと思います。