KENWOOD L-01A — 不動品からフルメンテでLシリーズが始まった当時の音を呼び戻す
電源入るもボリューム調整不可、小音のみで全体的に出音NG、ランプ切れなど経年不具合解消から、基板クリーニングやシャシーと含めたフルメンテを実施。
| メーカー | KENWOOD(ケンウッド) |
|---|---|
| モデル | L-01A |
| 種別 | プリメインアンプ |
| 発売年 | 1979年 |
KENWOOD L-01Aは、1979年に発売されたケンウッドのLシリーズのプリメインアンプで、Lシリーズの口火を切った記念すべきモデル。電源トランス部を別筐体とした当時としては大変珍しい構成で、そのスタイルは後継の超弩級アンプL-02Aのベースとなるものでした。
マグネティックディストーションと呼ばれる磁性体・磁束となるトランスを分離し、またアンプ筐体含めた構成部品は徹底的な非磁性体化を図った構造としています。
電源トランスは合計537.6VA(L-02Aは444VA)という超強力な大容量トランスを搭載し、それぞれのトランスは左右チャンネルごとに使用されセパレーション性を良くしていました。そのトランスが内蔵されたパワーサプライユニットは、トランスの上にスチールカバーを被せ、さらに非磁性体の筐体で覆うしっかりした作りこみでした。
内部で使用されているブロックコンデンサ含めた電解コンデンサは、当時ELNAに特別に製造させたもので、「TRIO」ロゴが印字されています。当時のOBからは、TRIO社内にELNA技術スタッフが駐在し、TRIOの開発・設計部門とコンデンサ開発も連動して行われていたもので、最終的な音決めの重要な要素にも関わっていたとのことです。
いまでこそLシリーズと言えばL-02Aの存在が大きいですが、その布石を打ったL-01Aも大変こだわった造りから、普通のプリメインアンプとは言えない、マニア心をくすぐるものでした。
「音量変化が出来ない」「ボリュームが回らない」「音が小さいし歪んでいる」「ランプが切れている」
ボリュームノブとボリュームを連結するロッドの軸受けがグリス固着し完全に回らない状況に。またメインボリューム及びバランスボリュームにもガリがありました。
出力リレーの劣化に留まらず、各種スイッチ類も切替ノイズ発生。インジケーターランプにおいては、球切れの他、ランプ取り付けベースの熱による溶解などかなりの劣化が見受けられました。
RCAターミナルは、ネジ取り付け部のプラスチック割れに伴い、ネジが締まらずRCAターミナルがグラグラに。
パワーサプライユニットにおいては、底板の変形、電解コンデンサの液漏れが認められました。
指摘症状の再現確認、図面・回路図調査、劣化部品の特定(静電容量やhfeなど)と対応判断、各部の測定を実施しました。
製品状態に基づき、適切な交換部品を選定・調達しました。オリジナルの設計意図を尊重しつつ、信頼性の高い現行品を厳選しています。
フラックス除去、すべての古い半田の吸い取り、再半田、コネクタ研磨清掃と接点保護しています。
基板の洗浄 — 作業前後
シャシー分解、一部フレーム部品の再塗装、洗浄、ランプ交換(ランプマウントは互換品を使用)、遮光スポンジ張り替え、ヒートシンク清掃(ディファレンシャルアンプ部のヒートシンクのみ特殊研磨剤でアルミのクスミ除去研磨を実施)、RCA端子清掃、SP端子清掃を実施しました。
パワーサプライユニット部に関しては、ボトムシャーシが重量で変形していたため板金修正しました。DCケーブルピンの研磨清掃も実施しました。
RCA端子の作業前後とネジ割れ部分の筋金入れによる補修、フロントパネル部のリフレッシュ
筐体フレームまでの分解と、一部艶消しブラックでの再塗装
主要の半導体部品の交換(初段差動増幅IC、ドライバートランジスタ、ファイナルトランジスタ)は、オリジナル品番、ランクを使用し交換しました。ファイナルトランジスタ部の放熱絶縁グリスの除去及び清掃、絶縁マイカは交換をしました。
その他トランジスタは、長年の異物付着したマイグレーション/ウィスカの除去を一つ一つ丁寧に実施しました。
電解コンデンサについては、オリジナル順守として無用な交換を避けるべく、静電容量/ESRなど電気的特性検査を行い、劣化が認められるものだけを選別部品と交換しました。
オフセット/バイアス調整用のトリマは、高信頼性部品に交換しました。
小信号を扱う各種電磁リレーは、ガス封印型の新品リレーに交換しました。
左上:専用製造された電解コンデンサ/右上:特性検査/左下:特別製造のブロックコンデンサ(内部電解液のドライアップ状況の確認も行う)
左:入力回路および初段増幅回路基板の作業前/右:イコライザー回路基板、入力回路および初段増幅回路基板の作業後
左:パワーアンプ基板の作業前/右:作業後
左上:小信号用電磁リレーの交換/右上:パワーアンプ部基板のリフレッシュ前/左下:パワートランジスタ交換に伴うhfe選別測定/右下:ディファレンシャルアンプ部の作業後
メインボリューム及びバランスボリュームは完全分解を行い、ガリの元となる異物除去とクリーニングを実施。摺動子のブラシは、特殊溶剤を用いた超音波洗浄を施し、ブラシ再整列と圧の再調整を実施しました。部品組み上げ後、常用域での左右差吸収調整を施しています。
メインボリュームとノブを連結しているロッドについては、徹底洗浄を行い、その後高級機らしい回転トルクを与えるためトルクグリスにて調整を実施。
スイッチについては、重要切り替えスイッチ部のみ硬質金メッキ部品のため、従来の研磨清掃ではダメージを与えます。適材適所での接点清掃を施しています。
ボリュームシャフトとボリューム分解作業
硬質金メッキを施したスイッチの作業前後
調整時に使うテストポイント端子を製作し取り付け実施。
各部の回路調整をサービスマニュアル要求値に基づき実施。
50時間以上の長時間エージングを実施し、動作の安定性を確認。最終的な音出し確認と外装点検を経て完了としました。
左:作業前の内部/右:フルメンテ作業後の内部
Crafted Audio Servicesでは、症状だけで判断するのではなく、機器の構造や設計意図を踏まえながら状態を確認し、必要な整備をご提案しています。KENWOOD L-01Aをはじめ、各種アンプの動作不良などでお困りの場合は、お気軽にご相談ください。
名機のL-02A人気に埋もれそうなL-01Aですが、デザインと言い独特の特異性を放つ個性豊かなアンプです。
非磁性体にこだわった製品企画上、筐体や各種部品への非磁性体考慮だけではなく、L-02Aと違った設計アプローチで作られたことが分かります。
例えば、回路を取り巻くグランドパターン。重要回路には半田面だけではなく部品面にもグランドパターンを這わした疑似両面基板、そうでない基板についてはグランドパターンだけでなく互いの干渉を防ぐ意味でも全体的にゆとりを持ったパターン設計がされています。
フォノイコライザー回路については、基板の中央には左右の干渉を防ぐため銅板によるバスバーでセパレート、パワーアンプ回路からSP端子までのグランドパターンも銅板バスバーでコネクションされています。
小信号が通るラウドネス/バランスON-OFF/Rec-Outスイッチには、硬質金メッキ処理端子が有名ですがそのスイッチを覆うカバーもぬかりなくアルミ製で、こちらも非磁性体のこだわりが垣間見れます。
当時の商品企画の方に伺うと、一般的なオーディオ機器では常識の鉄板などによる筐体カバーではないため、外来ノイズや信号干渉に相当労力を注がれたと。
もうこのような個性の強い製品は出ないのではないかと思います。
この時代のL-01Aは、すでに完動品及び状態の良いものがほとんどなく、フルメンテで蘇らせると当時TRIOがどのような想いでこの製品を開発し世に送り出したか良くお分かりいただけるかと思います。
分厚いアクリルパネルで覆われたフロントパネルは、電源を入れるとたちまち電球による優しい光でオペレーション状態を浮かび上がらせてくれます。
貴方の大事なオーディオルームで、少し部屋の照明を落としL-01Aの精悍な佇まいと、奏でる音の良さを体験してみてはいかがでしょうか。